姿勢を良くする広背筋トレーニング(姿勢矯正、姿勢が悪い、メリット、筋トレ、自重、女性、鍛え方)
こんにちは!今回は、キレイな姿勢になるための広背筋トレーニングについて、具体的な方法をお伝えします!
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○管理人プロフィール
▶足と靴専門の理学療法士。理学療法士になる前に、足と靴の専門学校にて2年間学んできましたので、足・靴に対する知識は比較的豊富です。
▶実際の靴作りも行っていたので、構造的なこともお伝え出来ます。(ニーズがあるのかは不明)
目次
・キレイな姿勢になるメリット
・キレイな姿勢のチェックポイント
・広背筋ってどこ?
・なんで広背筋を鍛えるの?
・簡単なトレーニング方法
・まとめ
・キレイな姿勢になるメリット
▶キレイな姿勢になると、見た目が美しくなるのはもちろんですが、他にもメリットがめちゃめちゃあります!!
【キレイな姿勢になるメリット】
・見た目にも美しくなる。
・関節への負担がへり、足腰の痛みが減る。
・心理的にもポジティブになりやすくなる。
・各筋肉の負担が減り、疲れにくくなる。
・循環が改善され、頭もスッキリする。
・感覚器が正常になり、運動神経が良くなる。
・異性から魅力的に見え、モテやすくなる。
・バランス能力が向上する。
↑こんなにたくさんメリットがあると、とにかく早く姿勢を良くしたくなりますね!!
次は、キレイな姿勢のチェックポイントについてお伝えします!⇩
・キレイな姿勢のチェックポイント
【キレイな姿勢のチェックポイント】
①耳
②肩
③足の付け根
④膝
⑤足首
↑この5つが天井に向かって真っ直ぐなラインになっていれば、一番理想的です。
よくある例としては、
↑頭が前に出ている状態のストレートネック
↑いわゆる猫背
▶こんな姿勢が多いかと思います!
これらについては、普段パソコンやスマホを使用する現代人にとってはめちゃめちゃ多い姿勢になります!!
こんな姿勢を改善するための筋肉の一つが、『広背筋』です!
・広背筋ってどこ?
▶まずは、広背筋がどのようについているのかみていきましょう!
▶広背筋は、背中を広範囲に覆うように付いています。本当に名前のとおりですね!
▶背中の筋肉は他にもたくさんあるのですが、中でも一番表面に存在しているので、かなり触知しやすい場所にあります。
↑※黄色の○の部分が広背筋です。
▶広背筋は、腕から腰にかけて付いているので、腕の運動と背中の運動をするときに働きます。
・なんで広背筋を鍛えるの??
▶キレイな姿勢になるために、なぜ広背筋を鍛えないといけないのでしょうか??
理由としては、
①背筋を伸ばすための伸展筋の一つである。
②鍛えることで、ウエストが絞れ、理想的な背骨のカーブになる。
↑この2点があります。
▶背筋を伸ばす筋肉は他にもたくさんありますが、広背筋を鍛えることでいわゆる『反り腰』にならずに、理想的なウエストのカーブが得られます!!
▶女性にとってはとても良いメリットですね!!
・簡単なトレーニング方法
▶今回は、姿勢の改善にダイレクトに活かせるように、座った状態で行える簡単2ステップエクササイズをお伝えします!!!
①肩を下げる運動(肩甲帯下制)
▶まずは、座った状態で肩を下げます。
【両手同時に行い、10秒キープ×10回実施】
★広背筋に力が入っているか確認してから行うと効果的です!!
※背筋を伸ばした状態で行うと、効果が強くなります!!
②下方プッシュ動作
▶①の運動で広背筋を意識した後に行います。
▶座った状態で、座面を下方にプッシュする。
【両手同時に行い、10秒キープ×10回実施】
※腕は少し後ろにして、プッシュするのがポイントです!!
これらの運動を行うと、広背筋が働きやすくなり⇩下図のような姿勢になります!!
・まとめ
▶今回は、キレイな姿勢になるための広背筋トレーニングをご紹介しました!
▶めちゃめちゃ簡単なトレーニングなので、是非試してみて下さい!
今回はこれで終わります!最後までお読み頂きありがとうございました!
広背筋の筋トレ・鍛え方5選(自重、ダンベル、起始停止、女性、器具なし、初心者、タオル、座りながら)
こんにちは!今回は、広背筋のトレーニング方法について、文献をもとに記載していきます!
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目次
・広背筋ってどこ?
・広背筋を鍛えるメリット
・広背筋の特徴
・広背筋のトレーニング方法
・まとめ
・広背筋ってどこ?
▶まずは、広背筋がどのようについているのかみていきましょう!
▶広背筋は、背中を広範囲に覆うように付いています。本当に名前のとおりですね!
▶背中の筋肉は他にもたくさんあるのですが、中でも一番表面に存在しているので、かなり触知しやすい場所にあります。
↑※黄色の○の部分が広背筋です。
▶広背筋は、腕から腰にかけて付いているので、腕の運動と背中の運動をするときに働きます。
※専門的な位置関係はこんな感じです⇩
起始:胸椎6番目~骨盤後面、肩甲骨下端、下部肋骨
停止:上腕骨の前側
・広背筋を鍛えるメリット
広背筋を鍛えると、以下のメリットがあります。
・ウエストが細くなる
・姿勢が良くなる
・背中の脂肪がなくなる
・基礎代謝が上がる(痩せやすくなる)
↑このように、女性には嬉しいメリットがいっぱいです!
【ウエストが細くなる】
▶広背筋は背中の表面を覆うように付いており、鍛えるとウエストが細くなります。
▶腹斜筋や腹横筋といった、いわゆる腹筋群と合わせて鍛えるとさらに効果倍増です!!
【姿勢が良くなる】
▶文献によって異なりますが、広背筋は理想的な姿勢を保つための『姿勢保持筋』の一つであると言われています。
▶広背筋が働くと自然と背筋が伸びるので、キレイな姿勢になりたい人は必ず鍛えていきたい筋肉ですね!!
【背中の脂肪がなくなる】
▶背中の脂肪で悩んでいる方はたくさんいると思います!
▶広背筋は背中の表面全体を覆う筋肉なので、鍛えることで周囲の脂肪が燃焼され、キレイな背中のラインになりますよ☺
【基礎代謝が上がる】(痩せやすくなる)
▶広背筋は人体の中でもかなり大きい筋肉の一つなので、広背筋を鍛えることで基礎代謝も大幅にアップします!!
▶基礎代謝が上がると一日の消費カロリーが上がるので、痩せやすい身体になります!
↑このようなメリットを考えると、とにかく鍛えていくしかないですね!!
・広背筋の特徴
▶広背筋は大きく分けると上部繊維と下部繊維に分かれます。
※↑上図の赤丸が上部繊維、黄丸が下部繊維。
▶上部繊維は主に肩の運動の際に働き、
下部繊維は主に体幹や骨盤の運動の際に働きます。
▶上部繊維と比較すると、下部繊維の方が面積が大きく、ウエストを細くしたいときや背中の脂肪を燃焼させたいときには下部繊維が重要になります!!
▶そのため、今回は下部繊維のトレーニング方法を中心にお伝えしていきます!
・広背筋のトレーニング方法
▶では具体的なトレーニング方法を挙げていきます!!
※今回は、効果があるといわれる一般的な方法について記載します。
【チンニング】
▶広背筋を鍛える上で一番代表的なトレーニングの一つです。いわゆる『懸垂』ですね!
▶チンニングでは、広背筋・三角筋後部繊維・上腕二頭筋などが鍛えられます。
★具体的な方法
①懸垂用の棒を握る(肩幅よりも広く持ちます)
②背筋を伸ばしながら、ゆっくり身体を持ち上げる。
③限界まで持ち上げたら、1秒キープする。
④その後、ゆっくり元に戻る。
※↑出来るだけ肩関節を最大可動域まで使用するように注意して行いましょう!!
【ワンハンドローイング】
▶これについても、広背筋トレーニングの代表的な種目の一つです。
▶これはダンベルを使用する肩のトレーニングとなります。(広背筋、三角筋後部繊維、僧帽筋)
★具体的な方法
①ベンチや椅子を用意し、鍛えたい腕と反対側の膝を付ける。
②反対側の腕で椅子を掴み、鍛えたい腕にダンベルを持つ。
③肩甲骨を内側に引き寄せるイメージで、ゆっくりダンベルを持ち上げる。
④持ち上げた状態で1秒以上キープする。
⑤その後、ゆっくり元に戻る
※引き上げる際に体幹が傾かないように固定して行いましょう!!
※フォームが保てる重さのダンベルを用意しましょう!
【タオル・ラットプルダウン】
▶タオルを使用するお手軽なトレーニング方法です。
▶自宅でも簡単に行え、しっかりトレーニング効果がある方法です!!
★具体的な方法
①椅子に座った状態で、背筋を伸ばす。
②両手でタオルを把持する。
(肩幅よりも広くなるようにします。)
③左右均等の力で引っ張りながら、タオルを肩のあたりまで降ろします。
※腰だけを反らせようとし過ぎると、腰痛の原因となるので注意が必要です!
※目線はまっすぐ前を向くようにしましょう!
【ダイアゴナル・エクステンション】
▶器具を用いない、お手軽な自重トレーニングです。
▶広背筋に加えて、脊柱起立筋や僧帽筋、大殿筋なども鍛えることが出来ます!!
★具体的な方法
①マット上などで、うつ伏せになる。
②両肩を挙上し、視線は前を向く。
③鍛えたい側の腕を天井に向かって挙上し、同時に反対側の下肢を挙上する。
④挙上した状態で10秒キープし、その後反対側の上下肢を挙上する。
※両手はやや外側に開いた状態で行います。
【下方プッシュアップ】
▶座った状態で、市販のプッシュアップバーなどを使用し行います。
▶個人的には、一番だれでも筋収縮が得られやすい方法かと思います!
★具体的な方法
①椅子などに座った状態で、背筋を伸ばす。
②プッシュアップバーを両手で把持した状態で、肘を伸ばす。
(プッシュアップバーは腰よりもやや後方に置くのがポイントです。)
③肩甲帯を出来るだけ下に降ろすイメージで、10秒以上キープします。
※胸を張り、背筋を伸ばした状態を意識してキープしてみてください!!
まとめ
▶今回は一般的なトレーニング方法についてお伝えしましたが、女性や子供、高齢者でも無理なく行えるトレーニング方法についてはまた別の記事でお伝えしようと思います!!
最後までお読み頂きありがとぅございました!!
広背筋っていつ使うの?理学療法士(起始停止、作用、筋トレ、自重、リハビリ、鍛え方、女性)
こんにちは!今回は、広背筋について、理学療法士向けに『リハビリでどんなときに使用するのか?』という視点で記載していきます!
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目次
・広背筋の解剖
・広背筋の役割
・リハビリではどんなときに使用するのか?
・広背筋のトレーニング方法
・まとめ
・広背筋の解剖
▶まずは、広背筋がどのようについているのかみていきましょう!
起始:胸椎6番目~骨盤後面、肩甲骨下端、下部肋骨
停止:上腕骨の前側
↑写真にあるように、背中の広範囲を覆い尽くすように存在しています!
▶背部の複数の部位から起始して、停止部で上下の 筋線維が反転して付着しているのがポイントですね!
・広背筋の役割
▶では、次は広背筋の役割についてです。
・肩関節伸展・内転・内旋・水平内転
・下方へのプッシュアップ
・肩甲骨の下制(上腕骨を介して)
・体幹の伸展・回旋・側屈
・骨盤の挙上
・呼吸補助(呼気、咳嗽筋)
特に、広背筋の上部繊維は肩の運動に関与し、下繊維は体幹の運動に関与するといわれています。
※広背筋は肩外転、挙上位で一番筋が働きます。
★ちなみに、広背筋が主動作筋である肩伸展に関与する筋は以下のとおりです⇩
肩伸展の筋
主動作筋→広背筋、三角筋後部繊維
補助動筋→上腕三頭筋長頭、大円筋
・どんなときに使用するのか?
⇩今回は、リハビリ時に注目したほうが良いポイントについて個人的に抜粋したものを記載します!
①座位での立ち直り反応(側屈)
→立ち直り反応が正常であれば、座位で側方に重心を移動させると反対側の体幹が側屈します。(右側に重心を移動させると、左側の体幹が側屈)
→体幹を側屈させる際に、広背筋の下部繊維が働きます。
②立ち上がり時の上腕での引き付け
→下肢の筋力が不足していると、手すりなどを把持して立ち上がり動作を行います。
→前方にある手すりを引っ張るようにして立ち上がる際に、広背筋が働きます。
③下方へのプッシュアップ(いざり動作)
→ベッドから起き上がった後、両手でベッドを押しながら臀部を移動させる場面があるかと思います。(いざり動作)
→その際に広背筋(特に下部繊維)が働いて、下方へのプッシュアップを行います。
④立位姿勢の保持(体幹伸展)
→広背筋が両側で働く際には、体幹の伸展が生じます。
→高齢になると円背姿勢になる患者さんがほとんどなので、体幹の伸展は重要ですね!
※文献により異なりますが、広背筋を姿勢を保持するための抗重力筋としてカテゴライズしているものもあります。
⑤歩行時
○骨盤の挙上
→歩行の遊脚期に、骨盤を挙上する場面で広背筋の下部繊維が働きます。
○体幹の前方への制動
→歩行初期(IC-LR)にかけて、大殿筋や脊柱起立筋とともに体幹の前方への制動のために働きます。
○体幹の回旋
→歩行時の体幹回旋時に、片側の広背筋が働きます。
○上肢の振り
→腕を後方に振る際に、広背筋が働きます。
→ただし、円背姿勢の方などはそもそも腕が振れていない人もたくさんいるので、活動の程度については個人差が大きいと思います。
まとめ
以上、今回は広背筋の働きについて、主に臨床からの視点で記載しました。
理学療法士はどうしても下肢へのアプローチがメインになりやすいので、広背筋に対して介入する場面はめちゃめちゃ多くはないと思います。
ただ、今回のようにまとめてみると、結構臨床で活かせることが結構ありそうなので、私自身もこれから注目していきたいと思います!!
今回はこれで終わります。最後までお読み頂きありがとうございました。
横隔膜の鍛え方(どこ?、効果、メリット、呼吸、トレーニング、
こんにちは!今回は、横隔膜について、文献を元に記載していきます!!
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●このブログをみて得られるメリット
・横隔膜について記載されている文献を一気見出来る
目次
・横隔膜の解剖
・横隔膜の役割
・横隔膜と腰痛の関係
・左右の横隔膜での違い
・横隔膜トレーニングの考え方、目的
・横隔膜の具体的なトレーニング方法
・まとめ
・横隔膜の解剖
▶︎まず、解剖についてみていきます。
↓以下文献より一部抜粋
【文献①】
▶︎横隔膜の筋線維,その複雑な構造から付着部によって, 胸骨部,肋骨部,腰椎部の 3 つのグループに分けることができる.
▶︎胸骨部の筋繊維は剣状突起に付着
▶︎肋骨部は,肋骨 7 番から 12 番の内側面に付着しており,腹横筋と合流する部分がある.
▶︎腰椎部の筋繊維は弓状靭帯 と腰椎 1 番から 3 番の椎体の前部に付着している.
※弓状靭帯が大腰筋,腰方形筋,そして腹横筋と筋膜を通 して繋がっていることを考えると,これらの筋肉群の活動状態が横隔膜に影響を及ぼし,逆もまた然りである。
↑このように、横隔膜は3つに分類できます。
腹横筋、大腰筋、腰方形筋と筋・筋膜でつながっているということがポイントかと思います!
・横隔膜の役割
▶︎では次は、横隔膜の役割について記載していきます。
↓まずは文献より一部抜粋したものをご覧ください。
【文献①】
▶︎横隔膜は体幹安定筋と呼吸筋(ガス交換)としての機能がある。
▶︎腰部・体幹において,重要とされる深層の腹横筋,内 腹斜筋,多裂筋,骨盤底筋群,そして横隔膜は,脊柱の安定性に寄与している
▶︎Wallden は,横隔膜は複雑な複合体であり,横隔膜ほ ど構造的にも体の中心にあり,身体的,生化学的,そして精神的にも中心の役割を果たしている筋肉はないと述 べている.
▶︎主呼吸筋としての役割だけでなく,姿勢維 持,脊柱の減圧,体液の流動性,内臓機能の安定,情動の制御,消化などあまりよく知られていな い機能も含めると,一つの筋肉がこれだけ多くの役割を 果たしていることに驚かされる.
▶︎胸郭内に空気が入り膨らむ吸気時には,腹腔も同 じように膨らみ,呼気時には胸郭から空気が出ていくた め萎み,腹壁の求心性収縮により腹腔も同じように萎むため,胸郭と腹腔はシンクロしながら呼吸動作を繰り返 している。
▶︎通常このポンプは胸腔と腹腔のバランスが取れている 場合問題なく働くが,特定の疾患や疾病によって変化さ せられることがある.
(側弯,胸椎の後弯,神経 筋疾患,肥満,喘息,肺気腫、精神的なストレスなど)
▶︎脊柱の安定化 には横隔膜の役割を無視することはできず,姿勢維持に 加えて呼吸機能の正常化はもちろん,嚥下,発声などと 統合され,バランスを取る必要がある.
▶︎アスリート のパフォーマンスを考えた時に,体幹トレーニングは重 要であるという認識は周知されているが,この際,横隔 膜の役割を考慮し,腹壁の筋肉群の強化のみならず,呼 吸機能と統合しながらコンディショニングを進めていく べきであることが示唆されている。
【文献②】
▶︎呼吸運動は胸腔の拡大運動によって行われており、中でも主要な呼吸筋として横隔膜が挙げられる。
横隔膜は左右の横隔神経によってそれぞれ支配され、吸息運動における主動作筋として働く。また、安静時 1 回換気量の約 70% を横隔膜が担う とされている。
↑役割について簡単にまとめると、
・大きくはガス交換と姿勢維持(脊柱の減圧)の役割がある。
・その他:体液の流動性,内臓機能の安定,情動の制御,消化など
こんな感じですね!!
特に理学療法士の私としては、「姿勢維持」という部分が重要かと思います!!
・横隔膜と腰痛の関係
▶︎横隔膜の機能低下は腰痛とも関わっており、文献も多数存在します↓
【文献①】
▶︎最近の MRI を用いた研究では,腰痛患者の横隔膜は,健 常者に比べ薄く,呼吸のテンポも早いことがわかった.
▶︎吸気の際,腰痛患者は,健常者よりも横隔膜の下降 する長さが小さいことがわかっていて,腰痛患者の横隔膜は健常者に比べて疲労しやすいという報告もされて いる。
▶︎Kolar らは,腰痛患者の横隔膜の下降が健 常者に比べて少ないだけではなく,上肢や下肢に負荷を 与えた際は,吸気時も呼気時も横隔膜の活動域が少なく なり,位置が高くなることを示した。
▶︎腰痛患者の横隔膜の状態は, 健常者に比べ薄く,そして四肢に対する負荷に対して, 腹腔内圧のコントロールや腹壁との協調性を失っている と考えられる。
【文献⑥】
▶︎健常群に比べ腰痛群では%FVC,PEmax,上部・下部胸部スケール値が低下しており,慢性腰痛者では呼吸機能が低下している可能性が示された。
※努力性肺活量(FVC,%FVC),最大吸気圧(PImax)、最大呼気圧(PEmax)
↑こんな感じですね。腹腔内圧のコントロールが出来ていないと、呼吸障害・腰痛になりやすいので、併せて評価・アプローチする必要がありそうです。
・左右の横隔膜での違い
▶︎横隔膜は、解剖学的な要因によって左右で機能に差が生まれやすくなっています。
以下、文献より一部抜粋↓
【文献①】
▶︎弓状靭帯から走行する右半横隔膜の脚部は,3 つの腰椎 椎体に付着するのに対し,左半横隔膜の脚部は 2 つであ る.
▶︎また左の半横隔膜は右の半横隔膜より常に下に位置し,これらは右にある肝臓のポジションに支えられているか,もしくは左にある心臓の重さによる影響を受け ている
▶︎肝臓に支えられておりドーム状の形を取りや すい右半横隔膜と,心臓の重さにより平らな吸気ポジションになりやすい左半横隔膜は,左右の肋骨の内旋能力に差を生むと考えられ,同時に胸郭のバイオメカニクスに影響を与えるものと考えられる。
▶︎Terada らは,慢性足関節症のグループにおいて,左半横隔膜の収縮性に有意な差を認めており,慢性足関節症患者の横隔膜の機能不全と中枢神経系の変化を指摘している.
▶︎半横隔膜のポジションの違いが,胸郭や肋骨の回旋能力のみならず,腰部や頸部、そして足関節まで影響を及ぼしてい る可能性を考慮すべきである。
【文献②】
▶︎横隔膜は左右の横隔神経によって支配されることから、片側横隔神経を切除した結果、1回換気量や吸気時の呼吸流速は低下し、それに伴い換気時間は増加した。さらに、非切除側の横隔膜においては筋活動量が増加した。
▶︎両側の横隔神経を切除し、横隔膜の機能を完全に停止させた結果、1回換気量は大きく低下し、末梢血酸素飽和度は約9%低下した。
▶︎片側横隔神経切除により対側横隔膜の筋活動が増加すると言われている
↑正常でも、左側の横隔膜は右側と比べて機能が低くなりやすいということですね。
特に差が大きいと、各関節の障害を招く可能性があるので要注意ですね!!
・横隔膜トレーニングの考え方、目的
▶︎では、横隔膜トレーニングについてです。
具体的な方法について後述しますので、ここではトレーニングに対する考え方や目的について記載していきます。
↓以下、文献より一部抜粋
【文献①】
▶︎適切な圧力の受け渡しを胸郭と腹腔の間で行う正常な呼吸のポンプは,肋骨の適切な内旋能力が求められるが,適切な肋骨の内旋能力は胸郭の回旋運動にとっても必須である.
▶︎1 つの胸椎と肋骨で形成されるリングにつき 13 もの関節があるとされる胸郭において,そのバ イオメカニクスをエビデンス化するのは難しいとしなが らも,胸椎・肋骨の骨運動,関節運動において,胸椎右回旋時には右肋骨の外旋(肋骨後方の後方回旋),左肋 骨の内旋(肋骨後方の前方回旋)が起こると報告してい る.
▶︎腰痛患者には横隔膜の厚さ,そして横隔膜と腹壁の筋肉群との協調性を取り戻すことが治療アプローチのヒン トになるわけだが,横隔膜を患者自身が直接,横隔膜の状態を把握し,筋収縮でコントロールすることは難しい.
▶︎横隔膜の筋繊維に含まれている受容体の数が,通常の筋肉に含まれる受容体より少ないからである。
▶︎同時に横隔膜の構造的なアドバンテージは,胸 郭を構成する肋骨の形状に影響を受けており,受容 体の数が少なく直接的に変化を促すことが難しい横隔膜 の構造的最適化は,胸郭の形状変化に頼る必要がある.
▶︎肋骨上部では「ポンプハンドル」のように矢状面上を 中心に,肋骨下部では「バケツハンドル」のように前額 面状を中心に動作している
▶︎吸気時に外旋をし,上・前・外側方向に
▶︎呼気時には下・後・内側方向 に回旋して動くことを考慮して,適切に横隔膜のドー ムが上昇と下降を行う環境を作る必要がある.
▶︎横隔膜と胸郭の形状変化を考えた時に特に重要であるのは,横隔膜の付着部である肋骨の 7 番から 12 番の動作安定性である.
▶︎構造的アドバンテージを活かすためには,ドームの半径を小さくすることが必要であり、そ れに付随するのが肋骨の内旋運動である.
▶︎肋骨下部に付着する腹横筋や内腹斜筋が肋骨の内旋筋として適切であり,肋骨の内旋,ならびに呼気を伴った腹横筋や内腹斜筋を中心とする腹壁筋群の求心性,そして遠心性収縮を制御する能力が腰痛患者への横隔膜アプロー チの鍵となると考えられる.
▶︎Courney が述べているように呼吸療法,または呼吸 セラピーと呼ばれるテクニックは数多存在し,確かに効 果を上げているものがある.主にこれらが効果を上げて いる理由としては,呼吸の機能不全を是正する,呼吸機 能を補正することで治癒能力を刺激する,または精神 的,情動的状態を制御することである。
▶︎腰痛患者に対 しても呼吸を取り入れたトレーニングを実施した際,コ ントロール群と同じく腰痛も減少したが,呼吸を取り入 れたグループは腰椎の安定筋である横隔膜,腹横筋,そ して腰部多裂筋が厚くなったとの報告もある。
【文献②】
▶︎体幹の固定性を得るためには,あらゆる姿勢や動作で持続的な腹腔内圧を維持できる筋持久力や高い体幹伸展筋力が必要な際に腹腔内圧を高めるなどコントロールする能力が重要になると考える。
▶︎腹腔内圧が体幹安定性を補助し,少ない筋活動量で姿勢を維持できることがシミュレーションにより導き出された。
【文献③】
▶︎骨盤中間位と比べて骨盤後傾位では呼気筋力および胸郭拡張差,横隔膜移動量が有意に低下すること が判明した。
【文献④】
▶︎COPD では閉塞性換気障害と,呼吸困難感の最大要因である肺の過膨張が起こり,横隔膜は平坦化する。
▶︎最近の研究で,横隔膜や腹横筋は体幹 の安定化と呼吸の維持を図る二つの作用を持つことが明らかにされており,姿勢制御機構としての呼吸筋の役割についての重 要性が報告されている。横隔膜の平坦化という病態から横隔膜などの local muscle の機能低下が生じ,バランス能力の低下へと 繋がったのではないかと考える。
【文献⑤】
▶︎脊柱アライメントは体幹伸展筋力の与える影響が大きく,体幹伸展筋力の低下が脊柱後弯を増強させることを報告 した。
▶︎今回の結果から,腹腔内圧の設定で姿勢保持に必要な体幹伸展筋力が減少する結果となった。
▶︎これは腹腔内圧が体幹伸展筋力を補助し,体幹安定性を高めるといえる。本モデル上では,腹腔容積が変化しないため設定した腹圧が直接体幹に作用する が,生体では腹横筋や横隔膜,骨盤底筋などの筋力や筋硬度が必要となり,体幹の安定化に重要な役割を果たす。
↑このような感じです。
簡単に要点をまとめると、
・横隔膜のトレーニング時は肋骨の内旋に着目する。
・横隔膜は腹横筋、多裂筋などとともに、腹腔内圧のコントロールに関与している。
・腹腔内圧がコントロール不良であると、
▶︎脊椎後弯(体幹伸展筋力低下)
▶︎バランス能力低下
▶︎呼吸機能障害
などが生じる。
・腹腔内圧をコントロールするためには、
①あらゆる姿勢や動作で持続的な腹腔内圧を維持できる筋持久力
②高い体幹伸展筋力が必要な際に腹腔内圧を高めるなどコントロールする能力
↑上記2つの能力が必要になる。
↑このような感じでしょうか?
では次は具体的なトレーニング方法について述べていきます!
・横隔膜の具体的なトレーニング方法
▶︎基本的には、呼吸を伴ったエクササイズになります。
↓以下文献より一部抜粋↓
【文献①】
①アンチパラドックス呼吸
▶︎仰臥位で胸骨と臍に手を当て,胸郭と腹腔が同時に膨 らむように吸気する.呼気の際は同時に萎むように呼吸 をする.呼吸のテンポは,吸う 1:吐く 3:止める 1 とし,ゆっくりとしたペースで呼吸を繰り返す.座位, 立位でも可.胸郭と腹腔に置いた手の高さが常に揃って いるように注意して行う.
※胸郭に空気が入り吸気ポジションのまま呼吸を繰り返している場合は胸に置いた手の方が高くなり,臍に置いた手のみ動く傾向にある.
②肋骨内旋呼吸
▶︎仰臥位で肋骨縁のあたりに両手を起き,吸気時の肋骨の外旋,呼気時の肋骨の内旋を認識する.呼気時には特 に注意して肋骨の内旋を促し,獲得した内旋を失わない ように次の吸気に移る
※呼吸のテンポはアンチパラ ドックス呼吸と同じ.
↑これらのトレーニングは、両側の肋骨内旋を促すものになります。
↓では次は、主に機能低下しやすい左横隔膜に着目したトレーニング方法です。
③90-90 ヒップリフト w/ ライト・アーム・リーチ & バ ルーン
▶︎仰向けで両足を壁に休め,膝と股関節を 90 度に位置 させる.
▶︎10-15 cm のボールを膝の間に挟んで,左手に 風船を持つ.
▶︎両かかとは壁を蹴らずに,地面に向かって 引き,ハムストリングの活性化を感じる.
▶︎ここから右手 を天井に向かって伸ばしながら,風船にゆっくりと息を 吹きこむ.
▶︎息を吐き切ったら 3 秒間その状態を保ち,風 船の口は摘まずに,舌を郊外にあてたまま,鼻から息を 吸い,さらに風船を膨らませ右腕を天井に伸ばす.
※これ を 4 呼吸繰り返す。
④オール・フォー・レフト・ポステリア・ミディアスタ イナム・エクスパンション in レフト・トランク・ロー テーション
▶︎四つん這いの状態になり,左手の下に 3 cm ほどのブロックを入れる.
▶︎背中を丸め骨盤を後傾させ,息を吸い ながら両手を地面に押す.
▶︎この姿勢を保ちながら 4-5 回 ゆっくりと呼吸をする。
↑このような感じですね!
普段の動作時に活かすという意味では、立位や座位でも実施することが大切ではないかと思いました!!
・まとめ
▶︎今回は、横隔膜についてまとめてみました!
呼吸機能以外に、姿勢制御・内臓機能の安定・情動の制御など、役割が多岐に渡るため、大変重要な筋肉ですね!
▶︎今後の臨床に活かしていけたらと思います。
▶︎今回はこれで終わります。
最後までお読み頂きありがとうございました😊
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【文献①】大貫.呼吸機能と体幹,横隔膜の関係性について.日本アスレティックトレーニング学会誌 第 5 巻 第 1 号 27-34(2019)
【文献②】高位ら.呼吸機能に対する横隔膜の役割.Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)2012
【文献③】岡田ら.端坐位における骨盤肢位が呼吸機能に及ぼす影響 呼吸筋力,胸郭拡張差,横隔膜移動量における検討.Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)2017
【文献④】山口ら.男性慢性閉塞性肺疾患患者のバランス能力に関する研究 ~COPD 総合評価別の差異に着目して~.Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)2015
【文献⑤】畠山ら.腹腔内圧が体幹安定性に及ぼす影響 3次元体幹筋骨格モデルによるシミュレーション解析.Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)2015
【文献⑥】木庭ら.若年者における慢性腰痛と呼吸機能の関連.Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集).2015
深層外旋六筋とは?(解剖、作用、トレーニング、鍛え方、歩行)
こんにちは!今回は、深層外旋六筋について、文献を元に記載していきます!!
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・深層外旋六筋について記載されている文献を一気見出来る
目次
・深層外旋六筋の解剖
・深層外旋六筋の触診、筋電図
・深層外旋六筋の役割
・深層外旋六筋のトレーニング方法
・その他文献
・まとめ
・深層外旋六筋の解剖
↑言葉の通り、股関節の深層を通る筋肉で、骨盤の前後面では以下に分けられます。
前面:梨状筋、外閉鎖筋
後面:大腿方形筋、内閉鎖筋、上双子筋、下双子筋
▶︎また、骨頭中心よりも後方に位置するため、股関節後面の安定に関与しています。
・深層外旋六筋の触診、筋電図
▶︎では、これらの筋力は触診・または筋電図での検査は可能なのでしょうか??
▶︎筋電図については、いろいろ文献を見ましたが、測定可能であるという記載は見当たりませんでした。
▶︎同じく外旋筋の役割もある大臀筋によって覆われているため、表面筋電図による測定は現実的ではなさそうです。
▶︎また、触診については、いくつか方法がありました。
▶︎坐骨神経痛の原因にもなる梨状筋の触診については、以下の方法があります↓
①大転子、尾骨、上後腸骨棘をチェック
②尾骨-上後腸骨棘のラインから大転子にかけて二等分する
③二等分した上方に位置する三角形に梨状筋が位置している
↑こんな感じです。筋電図のように筋活動を個別で確認するのは困難ですが、筋硬結の有無をチェックすることは可能かもしれないですね。
▶︎ただ、そもそも筋硬結による固さなのか、筋緊張による固さなのかは触診では判断が困難であるため、あまり有用ではないような気もします。
▶︎よって、深層外旋六筋については基本的に触知出来ないと考えていたほうが良いかと思います。(個人の感想です)
・深層外旋六筋の役割
▶︎では、深層外旋六筋の役割について、文献を一部抜粋して記載していきます↓
【文献①】
▶︎股関節の深層に位置する筋は,股関節の安定性に関与 しているといわれており.股関節回旋(回旋)作用を もつ 筋が多い 。
▶︎実際に回旋筋の安定作用 については多くの報告が散見される
▶︎股関節の障害を有する患者は,歩行時の回旋運動が減少すると報告されてい る。
▶︎歩行時の回旋運動の減少は回旋可動域そのものの制限が生じていると考えるのが妥当であろうが,回旋運動の減少に回旋筋力が関与することも否定できない 。
▶︎歩行における回旋運動は,立脚前期の股関節屈曲から 立脚後期の伸展へと変化する中で,平均8°と報告され ている。
▶︎このように股関節屈曲・伸展(屈仲)角 度が変化する中で回旋角度は大きく変化するわけでないため,動作中に回旋角度を 定に保つ ように,回旋筋は等尺性の,いわば固定するための筋力を発揮し続けてい ると推測する。
▶︎外旋筋力は屈曲位での筋力がやや大きいものの屈伸角度の違い による変化は少ないことがあきらかになった。 内旋筋力については,屈曲するにしたがっ て有意に大きな値を示すことがあきらかになっ た。
▶︎一般に外旋筋として,主動筋である大殿筋.外旋六筋,そして補助筋として縫工筋,恥骨筋,中殿筋,小殿筋,大腿二頭筋が挙げられる。
▶︎Lang らに よると主要外旋筋群の仕事量の合計は40.5kgm であり,そのうち大殿筋 が13.5kgm ,外旋六筋が 9,0 kgm ,中殿 筋後部線維が5.3kgm,腸腰筋が3.7 kgmであり,多くが大殿筋や外旋六筋によっ て発揮される。
▶︎ 具体的に歩行時には,前方に進むための屈伸変化の 中 で,股関節の水平面上の動きは8° と小さくlo)11),歩行 時に回旋筋が一定の筋力を発揮してい ると推測すると,外旋筋がこの水平面上の一定した動きを制御するの に適していると考える
▶︎次に,内旋についてであるが,解剖学的肢位では,内旋トルクを発揮する水平面上の最適な位置に筋が存在しないため,内旋筋の主動作筋はないといわれており,補助筋として,小殿筋,大腿筋膜張筋,中殿筋,半膜様 筋,半腱様筋が挙げられる。
【文献②】
▶︎股関節疾患患者において,股関節外旋筋の機能低下が生じていることを臨床上経験することが多い。一般的に,深層外旋筋は骨 頭を求心位に保ち,股関節の安定化を図る役割を有していると考えられている
【文献③】
▶︎THA 後股外転筋力は非術側と同程度に回復していたが,股外旋筋力は非術側に比較し 1/2 程度の筋力しか有していないことが示され,術侵襲として外旋筋群に侵襲を加える後側方アプローチの THA における特有の問題と思われる。
▶︎THA 後 timed stair test(以下 TST)には重回帰分析より TUGT,股外旋筋力が独立して影響していることが明らかとなった。
▶︎TUGT は TST と同様に 方向転換を含む検査法であり,股外旋筋の機能の一つとして方向転換への関与が考えられる。
▶︎股外旋筋の機能はその付着から大腿骨上の骨盤回旋であり,股外旋筋の求心性活動により骨盤前方と体幹は加速し,固定された 大腿に対して対側性に回旋することで方向転換を行っているとされ, 股外旋筋出力低下が TST に影響を与えたと考えられる。
▶︎南角らによると THA 術後早期で股外旋筋に対するトレーニングにより,股外転筋力がより効率的に発揮できるようになった, また田篭らは股外旋筋群は支持側へ荷重する瞬間に股関節の求心性を高め,外転筋力と同様に片脚立位動作の安定性に貢献す ると報告している。
▶︎股外旋筋は骨頭を求心位に保持し外転筋の補助動筋としての作用に加え,今回の検討にて方向転換時の骨盤回旋を誘導するこ とで円滑な応用歩行動作能力に寄与していると考えられる。
【文献⑥】
▶︎股関節内旋筋及び外旋筋は、股関節を回旋させる以外の機能として歩行時に同時収縮による安定性の役割や遠心性収縮による制御としての役割などがある。
↑このように、外旋運動以外に様々な役割があるということですね!
▶︎少し要点をまとめると、
・深層外旋筋は、骨頭を求心位に保つ機能がある
・その機能により、股関節の安定化を図ることが出来る。
・歩行時には内外旋筋群の同時収縮により、股関節の水平面上での動き(8度程度)を制御している
・また、大腿骨上の骨盤回旋に関与するため、特に方向転換時に重要となる
・臼蓋と股関節の安定を得ることで、股関節外転筋群の効率的な筋発揮に関与する。
↑こんな感じでしょうか?深部にある小さな筋群ですが、機能が低下すると股関節の不安定性を招くので要注意です。
・深層外旋六筋のトレーニング方法
【文献④】
▶︎股関節深部筋である小殿筋や梨状筋は、股関 節回旋させる以外の機能として歩行時の骨盤回旋を制御する役割や姿勢制御に関与する筋としての役割が報告されている
▶︎ト レ ー ニ ン グ 方 法 は 、 低 負 荷 群 で は 黄 色 の セ ラ バンド(日本メデックス)を用いメトロノームにて 120/min のペースとし、高負荷群では、黒色のセラバンドを用い 40/min の ペースで股関節内旋運動を行った。
▶︎各群とも腹臥位、股関節最大外転位、膝関節屈曲位での股関節内旋運動を可動域全範囲 で行い、1 セット 20 秒間とし 3 セット行った。
▶︎股関節内旋トレーニングの即時効果として、低負荷群 ・ 高負荷群ともに片脚立位における重心動揺が減 少したことより、静的姿勢制御能力の向上に効果があることが示唆された。
▶︎これは、股関節内旋運動が深部筋である小殿筋 の支点形成能力を向上させ、股関節外転筋群をより効率よく働かせることができた可能性が考えられる。
▶︎さらに低負荷では、 静的アライメントにおける前額面上の安定性を向上させ、逆に高負荷では、動的姿勢制御や動的アライメントにおける前額 面上の骨盤の安定性を向上させることが示唆された。
【文献⑤】
▶︎股関節外旋筋のトレーニングは,腹臥位で股関節屈曲 0°・膝関節屈曲 90°での股関節外旋運動,仰臥位と側臥位での股関節軽度屈曲位からの股関節外旋運動とし,術後 1 週間は自動介助,術後 2 週目からは自動運動,術後 3 〜 4 週間は低負荷でのトレーニングを行った.
▶︎股関節深部外旋筋は,臼蓋に対して大腿骨頭を求心位に保持することから股関節の安定性に関与すると考えられている.
▶︎股関節外旋筋に対するトレーニングを実施したことにより,臼蓋と大腿骨頭の安定性が得られ, より効率に股関節外転筋群による筋力発揮が可能となったために股関節外転筋力が術前よりも 14.3%向上したと考えられた.
▶︎股関節外旋筋のトレーニングを行うことで股関節外転筋力が術前よりも向上したことから,THA 術後早期で の歩行能力も同時に改善したと考えられた.
↑トレーニングについては、あまり文献には具体的な方法は多く載っていなかったです。
簡単にまとめると、
・セラバンドを使用しての内外旋ex
(股関節外転位、膝屈曲位)
・腹臥位で股関節屈曲 0°・膝関節屈曲 90°での股関節外旋運動,
・仰臥位と側臥位での股関節軽度屈曲位からの股関節外旋運動
↑このような感じですね。
股関節の安定性という意味では、これらのトレーニングを前段階で行った後に荷重練習等(歩行、方向転換など)を実施するのが良いかと思います。
・その他文献
↓その他、深層外旋六筋に関する文献を一部ご紹介して終わります。
【文献⑥】
▶︎股関節内外旋筋出力の優位性は、一般的に外旋筋出力の方が高いとされている。
▶︎今回の測定では股関節屈曲位と伸展位では内外旋筋出力の優位性が逆転する結果となった。
要因として肢位が異なることにより股関節内外旋に参加する筋が異なることが伺えた。
▶︎一般的に股関節内旋筋の主な動筋は、小殿筋前部線維・中殿筋前部線維・大腿筋膜張筋であるが、KAPANDJIらによると梨状筋は股関節屈曲60度以下では外旋筋,60度以上では内旋筋として働くと報告している。
▶︎Delp SLらは大殿筋上部線維・中殿筋後部線維・小殿筋後部線維・梨状筋は伸展位では外旋筋として働き屈曲位では内旋筋として働くと報告している。
【文献⑦】
▶︎側臥位で 5 秒間の股関節外転等尺性収縮課題を行った。
▶︎中殿筋の%MVC は、股関節最大外旋位で最も高い値を示した。
▶︎中殿筋前部・中部線維は、腸 骨稜後面外側を起始とし、大腿骨大転子の外側面に 停止するため、その作用は、股関節の外転であると同時に内旋でもある。
▶︎そのため、外旋位を保持するこ とで、中殿筋前部・中部線維が安静時での筋長よりも 長くなり、その結果、筋活動が高まったと考えられる。
▶︎また、本研究の測定は側臥位にて行った。側臥位 という不安定な状態で 5 秒間の股関節外転等尺性収 縮を行ったことによって、股関節外旋時に側臥位を 保持する為のバランスを保つ必要があった。それゆ え、外見的に股関節外旋位を保持していても、骨盤 の安定性を保つために中殿筋が内旋方向にも働い たのではないかと考えられる。
・まとめ
▶︎今回は、深層外旋六筋について記載しました。
▶︎あまり普段そこまで意識されることのない筋群ではありますが、『股関節の安定』という役割は大きいですね。
▶︎今回はこれで終わります。
最後までお読み頂きありがとうございました😊
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【文献①】小玉ら.股関節屈曲・伸展角度の違い による股関節回旋筋力の変化.理学療法学 第41巻第2号 60 一 65頁 (2014年)
【文献②】引用:冨澤ら.股関節屈曲角度の変化に伴う股関節外旋筋力と筋活動 筋電図学的分析.第 50 回日本理学療法学術大会(東京)2015
【文献③】引用:THA 後の応用歩行動作能力に影響を与える因子 ~股外旋筋に注目して~. 第50 回日本理学療法学術大会(東京)2015
【文献④】引用:曽田ら.股関節深部筋に対する股関節内旋トレーニングの即時効果—姿勢制御能力および姿勢アライメントに及ぼす影響について—Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)2010
【文献⑤】引用:南角ら.股関節外旋筋に対するトレーニングは人工股関節置換術後早期における運動機能の向上に有用である.第48回日本理学療法学術大会(名古屋)2013
【文献⑥】引用:曽田ら.股関節内・外旋筋出力の優位性についての一考.第23回東海北陸理学療法学術大会.2007
【文献⑦】引用:新井.股関節肢位の違いによる中殿筋筋活動の筋電図学的解析.2007
股関節屈曲可動域制限の原因とは?(文献まとめ)
こんにちは!今回は、股関節屈曲の制限因子について、文献を元に記載していきます!!
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・股関節屈曲の制限因子について、文献を一気見出来る
目次
・股関節の解剖
・股関節屈曲の制限因子(各文献紹介)
・まとめ
・股関節の解剖
▶︎ではまず初めに、股関節周囲の解剖についてみていきます!
↑屈曲と拮抗して作用する股関節伸展筋は、
・大殿筋
・大内転筋
・小殿筋の後部線維と中殿筋の後部線維
・梨状筋
・大腿方形筋
・長内転筋
・短内転筋
↑これらが挙げられます。
また、その他股関節後面には、
・梨状筋
・上・下双子筋
・内閉鎖筋
・大腿方形筋
↑これらの筋が存在します。
では、これらの筋は屈曲を制限する因子になるのでしょうか??
・股関節屈曲の制限因子について
↓では次は、股関節屈曲の制限因子について記載されている文献を参照しています!!
【文献①】
▶︎股関節屈曲可動域制限が存在する場合、大殿筋やハムストリングスが筋由来の制限因子として容易に想定できる。
▶︎しかし臨床上、股関節屈曲可動域制限を有する患者で大殿筋やハムストリングスの走行に一致した伸張感を認めることは少なく、股関節深層外旋筋群(以下、深層外旋筋)や股関節外転筋群と想定される部位に伸張感を認めることが多い
▶︎梨状筋、上双子筋の筋長は股関節屈曲角度の増加に伴い伸張され、股関節75度屈曲位でそれぞれ119%、113%であった。
▶︎下双子筋の筋長は股関節屈曲30度まではほぼ変化がなかった。30度以降は徐々に伸張されたが他の筋に比べ最も伸張率が低く股関節75度屈曲位で105%であった。
▶︎大腿方形筋は股関節屈曲30度まではほぼ変化がなかったが、45度屈曲位で110%、60度屈曲位で124%、75度屈曲位で133%と股関節屈曲30度以降に急激に伸張され、今回対象とした筋の中で最も伸張率が高かった。
【文献②】
▶︎ 股関節中間位(解剖学的肢位)からの外旋に伴い深層外旋筋群はすべて弛緩した。
▶︎一方、屈曲に伴い梨状筋及び大腿方形筋が伸張され、外転に伴い梨状筋、上 ・ 下双子筋、内閉鎖筋は弛緩するが大腿方形筋、外閉鎖筋は伸張された。
▶︎複合的な運動では、屈曲位からの外転では梨状筋や上・下双子筋、 内閉鎖筋は弛緩するが、大腿方形筋は伸張され、さらに外旋が加わると大腿方形筋は最大限に伸張 され、筋線維が切れる程であった。とくに大腿方形筋を上下部の二等分した場合の下部の線維で顕 著であった。
▶︎変形性股関節症による人工股関節全置換術症例では、手術の展開において大腿方形筋は温存され ることが多いが、術中操作により過度のストレスがかかり、術後の関節運動時に大転子後面に痛み が生じることも予想される。
【文献③】
▶︎正常な股関節の屈曲を制限している軟部組織として股関節の関節包や,関節包を補強している靭帯があるが ,靭帯による制限に先行して筋などの軟部組織が伸張されてから,靭帯による制限が生じると考えられる。
▶︎股関節屈 曲が筋により制限をうけている場合,その制限因子は 股関節屈曲に拮抗する伸展作用を持つ筋の可能性が一 般的には考えられている。
▶︎股関節周囲筋の作用については多くの解剖学書あるいは運動学書に記されており,大殿筋,大内転筋,小殿筋の後部線維と中殿筋の後部線維,梨状筋,大腿方形筋,長内転筋,短内転筋 に伸展作用があると述べ られている。
▶︎一方,新鮮屍体を用いた人体解剖で股関 節屈曲時における股関節後方の筋を観察すると,梨状筋,上・下双子筋,内閉鎖筋,大腿方形筋の緊張が肉眼的に認められ,股関節の屈曲に伴い伸張制限の度合 は増加し,これらの筋を切離することにより,股関節 屈曲角度が増加することを確認した。
▶︎大殿筋切離後に股関節屈曲角度は両股関節とも約3°の増加が 認められた。このことから,大殿筋が股関節屈曲の制 限に全く関与してはいないとは断言しがたい
▶︎今回の実験では両 股関節において大内転筋の伸張は観察されず,股関節 屈曲に及ぼす影響は大きくはないと考えられた。しか し,大内転筋切離後に左股関節では屈曲角度の変化は 認められなかったものの,右股関節では約 9° の屈曲角度の増加を示していた。
▶︎小殿筋の機能に関してBeck らは,小殿筋は大転子だけではなく股関節の関節包にも付着し,関節包を緊張させ,股関節の肢位に関わらず股関節の安定性を補っていると述べている。
▶︎今回の実験では小殿筋切離の際には関節包を温存し,筋を起始部より切離した。肉眼 および触診による観察では両股関節とも小殿筋の伸張 は認められなかったが,小殿筋切離後に左股関節で約 5° の股関節屈曲角度の増加を示した。
▶︎小殿筋が関節包 に付着している部分は小殿筋の中でも深部にあたるため,肉眼あるいは触診による観察での筋の伸張を確認 できなかった可能性と,小殿筋を切離したことで関節 包の緊張が低下し,股関節屈曲時に大腿骨頭の後方す べりが大きく起きたことがその原因として考えられる。
▶︎しかし,右股関節では小殿筋切離後に股関節屈曲角度 の変化はみられなかったことより,小殿筋が股関節屈 曲の制限に及ぼす影響にも個体差があり,必ずしも股 関節屈曲の制限に大きな影響はないと考える
▶︎両股関節の中で顕著な伸張を呈した筋は,梨状筋と 内閉鎖筋であった。両筋とも外旋運動の主動筋と考えられている。
▶︎外旋筋群の中でも梨状筋と内閉鎖筋は,特 に股関節屈曲を制限する可能性が高いと考えられる。
▶︎理学療法プログラムとして股関節屈曲可動 域を拡大するときには,屈曲角度ばかりでなく内旋角度にも注意をはらう必要があると考える
【文献④】
股関節疾患患者において,股関節外旋筋の機能低下が生じていることを臨床上経験することが多い。一般的に,深層外旋筋は骨 頭を求心位に保ち,股関節の安定化を図る役割を有していると考えられている
【文献⑤】
▶︎先行研究にて、人工股関節置換術術後 2 か月(以下 2M)から術後 5 か月(以下 5M)にかけて爪切り動作が可能となる場合が多いことを報告した。
▶︎踵距離は股関節可動域による寄与率の算出から屈曲,外旋,外転の可動域を 4 : 3 : 1 の割合で表せるこ とを報告した。
▶︎屈曲の制限因子と開排の制限因子は股関節内転筋群や殿筋群の伸張性であり,共通している場合が多いた め,屈曲群と開排群では可動域の差がなかったと考える。
▶︎臨床的に大腿筋膜張筋から殿筋筋膜や胸腰筋膜の伸張性が関 与している場合もあり,今後は股関節内転可動域等の影響も検討したい。
↑とのことでした!
伸筋群についてはイメージしやすいですが、外旋筋群も制限因子となることを意識する必要がありますね!
・まとめ
↑では、制限因子についてまとめていきます。
【筋以外の因子】
▶︎制限因子として股関節の関節包や,関節包を補強している靭帯があるが ,靭帯による制限に先行して筋などの軟部組織が伸張されてから,靭帯による制限が生じると考えられる。
【筋性の因子】
△大殿筋
△大内転筋
△小殿筋の後部線維と中殿筋の後部線維
○梨状筋
⭐️大腿方形筋(外転・外旋を伴うと伸長↑)
・長内転筋(文献による記載無)
・短内転筋(文献による記載無)
・上双子筋(文献による記載無)
・下双子筋(文献による記載無)
○内閉鎖筋
・大腿筋膜張筋(制限因子の可能性あり)
・殿筋筋膜(制限因子の可能性あり)
・胸腰筋膜(制限因子の可能性あり)
↑以上のようになりました!!
筋だけでも、かなりの数がありますね!!
それぞれ単独で評価しながら因子を考えていく必要がありますが、特に外旋筋群は制限因子である可能性が高いので、注意が必要ですね!
▶︎以上で終わります。
最後までお読み頂きありがとうございました😊
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【文献①】田中ら.股関節屈曲角度と股関節深層外旋筋群の伸張率との関係—肉眼解剖による股関節屈曲可動域制限因子の検討—Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)2010
【文献②】
吉田ら.股関節屈曲・外転・外旋肢位の制限因子の検討 —遺体解剖による股関節深層外旋筋群の観察—.Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)2009
【文献③】
佐藤ら.健常人における股関節外旋筋群が股関節屈曲に及ぼす影響.理学療法科学 23(2):323–328,2008
【文献④】
引用:冨澤ら.股関節屈曲角度の変化に伴う股関節外旋筋力と筋活動 筋電図学的分析.第 50 回日本理学療法学術大会(東京)2015
【文献⑤】
引用:木下ら.変形性股関節症における人工股関節全置換術後の足趾爪切り動作方法と股関節 可動域の関係.第 50 回日本理学療法学術大会(東京)2015
多裂筋に対するトレーニング(腰痛、起始停止、運動療法、アプローチ、理学療法)
こんにちは!今回は、多裂筋のトレーニングについて、文献を元に記載していきます!!
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・多裂筋のトレーニングについて、文献を一気見出来る
目次
・多裂筋の解剖
・多裂筋の作用、働きについて
・触診方法、筋電図はどこにつける?
・多裂筋のトレーニング方法
・まとめ
・多裂筋の解剖
▶︎起始
仙骨背面、後仙腸靱帯、腰椎の乳様突起、胸椎の横突起、C4-7の頚椎関節突起
▶︎停止
2~4個上の棘突起に付着
【文献⑤】
▶︎多裂筋は腰背部では最も大きく最内側に位置し,特 に最深部の最も短い筋束は椎弓板線維と呼ばれ,各腰椎 椎弓板の背側下端から起こり,2つ下方の椎体の乳頭突起に停止する 。
▶︎第 5 番目の筋束だけはそれより 下方に乳頭突起が存在しないので仙骨(第1仙骨孔のす ぐ上)に停止する。
▶︎最深部の多裂筋は前方を除くすべて の方向で腰椎椎間関節を覆っている。
▶︎この深部の多裂 筋は椎体分節毎に脊髄神経後枝の支配を受け,分節単位 で脊椎の安定性の維持と姿勢保持に働くとされている
・多裂筋の作用、働きについて
▶︎次は、多裂筋の働きについてみていきます!
【文献①】
▶︎渡邊 は、 (立位での)側方体重移動保持における両側多裂筋の筋電図積分値に ついて検討したところ、移動側の多裂筋については直立 位レベルの活動を維持し、非移動側については増大を認 めたと報告している。
▶︎結果、立位で の側方体重移動保持における多裂筋、最長筋、腸肋筋の 筋活動について、移動側各筋については直立位レベルの 活動を維持し、非移動側各筋においては直立位よりも増 大を認めた。
▶︎移動側は胸腰椎の生理的弯曲を保つための胸腰椎伸展作用として姿勢保持に 関わっていると考える。
▶︎非移動側については側方体重移動保持にともなって自律的に 骨盤の非移動側が挙上位になることを考慮すると、胸腰 部の非移動側側屈をともなう骨盤の挙上作用として関与 するものと考える。
▶︎非移動側の多裂筋、 最長筋については、胸腰椎を非移動側に側屈させるとい う解剖学的作用を有し、腸肋筋については肋骨と腸骨を 近づける胸腰部側屈作用にてそれぞれ胸腰部の非移動側 側屈をともなう骨盤の挙上がおこなわれていると考える。
【文献③】
▶︎腹横筋の主たる機能として,上下肢運 動時における他の体幹筋群からの独立的,かつ先行的な活動や腹腔内圧の上昇,仙腸関節の安定化などが報告されている。また, 腰部多裂筋に関しては腹横筋と協調して,また両側性に活動することで腰椎へ安定性を提供しているとの報告がある
▶︎腹横筋や腰部多裂筋は機能的活動中に低レベルで持続的な活動が必要であるとされており,か つ両筋は低レベルな筋活動で充分に安定化機能を果たすと報告されている。
【文献⑤】
▶︎伸筋群のうち多裂筋は,両側性に作用した場 合は脊柱伸展,片側性に作用した場合は片側脊柱の回旋 機能を有する。
▶︎Norrisによると,多裂筋は脊柱伸展のための強い筋出力よりもむしろ,腰椎椎間関節の適合と腰椎の屈曲に抗した調和による脊柱安定に関与 すると考えられている。
▶︎深部に位置する多裂筋の役割は,脊椎分節毎の保護 と安定性の維持であり,深部の多裂筋による分節的安定 性の確保があって初めて,表在に位置する多関節筋のダ イナミックな運動が可能となるとされている
▶︎中枢神経系は運動に先行して腰部の安定性を確保する ために深部の多裂筋を収縮させている
▶︎多裂筋には固有感覚受容器が豊富に分布しており,関節包や靭帯からの感覚フィードバックと協調して,分節毎の安定性を保ち,脊柱の支持と保護に働いている。
▶︎福田は,体幹に大きな前屈モーメントが加わる場合,腹側筋群が腹腔内圧上昇による体幹伸展作用,および支点の安定性を得る作用として活動することを述べている。
▶︎福田は,種々の動作について検討し,動作中の 脊柱起立筋,腹直筋,腹斜筋の筋活動と腹腔内圧変動 の相関を求め,腹斜筋ですべての動作において高い相 関を認めたことから,この筋の働きが腹腔内圧の変動 を起こすと報告している。
▶︎安静坐位・坐位側方リーチ動作において多裂筋の筋作用による椎体間の固定性よりも,表在 体幹筋による腹腔内圧とそれらすべての筋の制御作用 により姿勢保持がなされていることが重心動揺に強く 影響を与えるものであると考えられた。
↑多裂筋の働きについて簡単にまとめると、
【基本的な作用】
・脊柱伸展(両側)
・脊柱の回旋 (片側)
【その他の働き】
・脊椎分節ごとの安定▶︎動作の基盤
(固有受容器が豊富▶︎先行随伴性姿勢調節)
(腹横筋と共同して腰椎を安定)
・立位での側方重心移動(非移動側)
・腰椎の屈曲に抗した調和による脊柱安定
(脊柱の伸展作用はアウターが関与)
※各姿勢・動作時に弱い筋活動を持続的に行えることが重要。
・触診方法、筋電図はどこにつける?
【文献④】
▶︎測定筋は左側の多裂筋,脊柱 起立筋とし,電極を筋線維と平行に電極中心間隔 20mm で貼付した。多裂筋の電極貼付位置は第 5 腰椎レベルで第 1・2 腰椎 間と上後腸骨棘を結んだ線上,脊柱起立筋は第 1 腰椎棘突起から 4cm 外側とした
【文献⑥】
▶︎多裂筋の表面筋電図の電 極貼付位置は,諸家により様々な報告がある。そのため,先行研究での電極貼付位置が統一されていない
▶︎棘突起外縁から多裂筋最表層の距離の平均値は,L2 棘突起レベルでは 4.4±3.3mm,L3 棘突起レベルでは 9.3±4.3mm,L4 棘突 起レベルでは 14.4±3.9mm,L5 棘突起レベルでは25.1±8.0mm,PSIS レベルでは男性 45.2±8.6mm,女性 30.1±15.2mm であっ た。PSIS レベルにおいて,男性が女性に比べて有意に多裂筋最表層の距離が長かった(p<0.05)。
▶︎本研究の結果から,L2 棘突起レベルでは 4mm,L3 棘突起レベルでは 14mm,L4 棘突起レベルでは 14mm,L5 棘突起レベルで は 25mm,PSIS レベルでは 30mm に表面筋電図の電極を貼付することで,多裂筋の筋活動を計測することは可能であると考え られる。
▶︎しかし,多裂筋の表面筋電図の電極は,多くは小児用電極を用いている。小児用電極は,縦 6mm,横 11mm である。 そのため,最長筋や腸肋筋の筋活動ではなく,多裂筋の筋活動のみを計測するためには,多裂筋最表層の距離は,最低 11mm 以上必要である。このことから,L2,L3 棘突起レベルでは,最長筋や腸肋筋などの隣接した筋の筋活動が混入している可能性 が高いと考える。L4 棘突起レベルでは,L4 棘突起近傍,L5 棘突起レベルでは,L5 棘突起近傍から 2cm の間,PSIS レベルでは, PSIS レベルの棘突起近傍から 3cm の間であれば,多裂筋の筋活動のみを測定することが可能であると推測される。
▶︎体幹 筋の形状や骨盤傾斜角度に男女差があることから,PSIS レベルにおいて男女差が生じたと考えられる。よって,L4 棘突起以下 のレベルで,表面筋電図の電極貼付位置を配慮することで,多裂筋のみの筋活動を計測できる可能性が示唆された
↑脊椎のレベルによって触知しにくい箇所もありますが、体表から筋の確認は出来そうですね!
【文献⑦】
▶︎電極の貼付部位は, Danneelsらの方法に従い , 多裂筋の電極中心を「両上後腸骨棘を結んだ線上および椎骨棘突起の近傍」とした
▶︎LM (多裂筋)は体幹深層筋であるため,L4−L5レベ ル 直上では脊柱起立筋が被
覆しており表在より筋の触知困難得であるが、後腸骨棘レベ ルの断面では脊柱起立筋の被覆はみられな い 。
▶︎下 位 LM は仙骨後面 お よび上後腸骨 棘 か ら,2−4分節上の棘突起に付着する。
▶︎L4−L5 棘突起に付着し,それらの伸展に関与するLM 線維の筋 電 位 は 上 記 の 電 極 貼 付 位 置 か ら 得 ら れ る と 判 断 し た。
・多裂筋のトレーニング方法
⬇️トレーニングの目的(腰痛)
【文献④】
▶︎腰痛患者では脊柱の安定性に重要な役割をもつ多裂筋が萎縮していることが報告されている(Barker,2004)。
▶︎また腰痛患者 の多裂筋の断面積は脊柱起立筋と比較して選択的に減少していることが報告されている(Danneels,2000)。
▶︎腰痛患者の リハビリテーションでは脊柱起立筋に対して多裂筋を選択的にトレーニングできる方法を検討していくことが必要である。
【文献②】
▶︎健常成人において四つ這い位では右下肢挙上や左下肢と右上肢の同時挙上と比較し、右下肢と左上肢の同時挙上の方が多裂筋の高い筋活動が認められた(p < 0.05)。
▶︎通常の四つ這い位での右下肢挙上と比較し、支持四つ這い位(上半身をベッドで支持)での右下肢挙上 の方が、健常成人、高齢者ともに多裂筋部の高い筋活動が認められた。通常四つ這いでは健常成人 43.7 ± 17.5%、高齢者 53. 3 ± 15.7%であり、支持四つ這い位では健常成人 55.8 ± 19.2%、高齢者 64.0 ± 17.6%であった(p < 0.05)。
▶︎健常成人の多裂筋部の四つ這い位での右下肢と左下肢の同時挙上は約 30〜48% MVC とされている。
▶︎上半身を支持することで、脊柱起 立筋の活動が抑えられ深層筋である多裂筋がより選択的に収縮することにより、安定性を一層高めることが可能であると考えられる。
▶︎高齢者では上半身を支持することで姿勢を保持することが容易となり、表在筋である脊柱起立筋の活動が抑えられて深層 筋である多裂筋の筋活動が高められ、安全で効果的な安定化エクササイズが実施可能となる。
【文献④】
▶︎挙上した上下肢を外転位にすることで,多裂筋の筋活動量のみが有意に増加し,多裂筋 / 脊柱起立筋比も増加する傾向に あった。
▶︎右上肢・左下肢外転位により脊柱左回旋モーメントが増加し,脊柱左回旋作用のある左脊柱起立筋は筋活動を 高めず,脊柱右回旋作用のある左多裂筋が筋活動を高めたためと考える。
▶︎挙上した上下肢に重錘負荷することで,多裂筋とと もに脊柱起立筋の筋活量も有意に増加し,多裂筋 / 脊柱起立筋比は有意に低下した。これは上下肢への重錘負荷により脊柱 屈曲モーメントが増加し,脊柱伸展作用のある両筋において脊柱起立筋が多裂筋よりも活動を高めたためと考える。
【文献⑤】
▶︎背臥位での多裂筋exの結果,圧変動幅が有 意に減少し,トレーニング中の腰部の前弯,後弯をコン トロールする多裂筋の筋機能に効果的であったことが示唆された。
▶︎しかし,安静坐位,最大側方リーチでの重心動揺の減少に影響を与えるものではなかった。
このこ▶︎とから脊柱安定性に寄与する多裂筋の機能が向上し椎 体間の固定性が高まることが,必ずしも重心動揺に影響を与えるものではないことが明らかとなった。
▶︎安静坐位保持では脊柱 起立筋や大腿直筋に筋活動が認められており,これらの 筋が姿勢を制御している特性の一つであると考えられ た。
▶︎側方へ体幹を傾斜させた場合,安静坐位での脊 柱起立筋や大腿直筋の筋活動に加えてハムストリング ス,特に外腹斜筋が強く働き,これらすべての制御作用 を用いて姿勢を保持しているとされている。
【文献③】※注意点
▶︎両筋は他の体幹筋群と比較して筋サイズも小 さいため,高負荷になるにつれて筋厚や筋断面積の値はプラトーに達していた可能性があり,さらに,高重量条件では重量の増 加に伴う体幹への高負荷に抗するため,体幹グローバル筋群である腹斜筋群や脊柱起立筋群などの活動性が優位となっていた ために筋厚や筋断面積の関連性が検知されなかったかもしれない。
↑トレーニング方法については簡単にまとめると、
・背臥位での多裂筋ex(ブレイシングなど)は筋力増強には有用。
※しかし、座位でのリーチ動作などでのバランス能力には寄与しない。
・バードドッグex(四つ這い位)
▶︎挙上した上下肢を外転位にすると○
▶︎上半身をベッドで支持した状態での下肢挙
上でも筋活動↑
(通常肢位では約 30〜48% MVC)
↑多裂筋のトレーニングでよくみられるのはバードドッグexが文献としても多い印象です。
▶︎注意点として上述したように高負荷のexは脊柱起立筋などが優位に働くようになるので、負荷量は気をつけた方が良さそうですね!
・まとめ
▶︎今回は多裂筋について記載していきました!
▶︎腹横筋などと共同して腰椎の安定を図る筋肉なので、併せてトレーニングしていきたいですね!
▶︎今回はこれで終わります。
最後までお読み頂きありがとうございました😊
●靴のレビューサイト【靴ログ】
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【文献①】引用:大沼ら.体幹研究と理学療法.関西理学 13: 11–22, 2013
【文献②】引用:今.効率的な多裂筋の筋力強化法の再考.Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)2012
【文献③】引用:三浦ら.腹横筋と腰部多裂筋の形態学的関連性.Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集).2015
【文献④】引用:正木ら.多裂筋選択的トレーニングの筋電図学的分析 ─四つ這い位での上下肢挙上における肢位の変化と重錘負荷による影響─.2012
【文献⑤】引用:掘切ら.多裂筋の筋機能トレーニングが坐位バランスの 安定化に及ぼす影響.理学療法科学 23(4):477–480,2008
【文献⑥】引用:松尾ら.多裂筋における表面筋電図の電極貼付位置の再検討―超音波画像診断装置を用いて―Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)2017
【文献⑦】引用:村尾ら.腰部多裂筋の選択的活動をコンセプトとした新たなexerciseの筋電図学的解析.理学療法学2015 年 42 巻 2 号 p. 114-118